田口遥はホテルでの仕事を終えた。今日は夏休みのイベント企画を挙げて、一つ採用をもらった。それはもっと若い人をターゲットにした、ロビーをクラブ風にするモノだった。
「昔は大変だったの。」
ハルカは同僚の香山淳子に言った。
「昔って?ハルカさんはクラブとか行ってたんですか?」
香山淳子はハルカの六つ下の24歳。
「うん。大学の時ね。昔はクラブって言っても恐いトコロでね。音楽を聞きに行くんだケド、そうさせてくれないってゆうか…」
「へぇー、ワタシもたまに行くんですケド…なんかヒップホップが認められたってゆうか…昔とは違うみたいですよ。」
「そう。ならワタシの企画も大丈夫そうね。」
「ええ。ワタシもとっても楽しみなんです。」
オフィスの後片付けをしながら二人の会話は終わった。
「じゃあ、お疲れさまでした。」
「お疲れさま。」
ハルカは一人になった。

帰りの駅に向かう途中で、見知らぬ中年男性に声をかけられた。
「あの、ゴメンね。サドラズホテルゆうんはドコですかね?」
九州人だった。きっとサドラーズホテルの事を言っている。