カナは期限の迫ったレポートを書いていた。そのせいで(か、どうかはわからないが…)部屋は、混沌の渦に巻き込まれていた。その頃はハルカと一緒に暮らしていた。ハルカはドア一枚挟んだ部屋の荒れ模様を嘆いては叱り、また年末でもないのに大掃除を敢行し、カナをウザがらせた。傍から見れば当然の行動だが、カナにとっては、ただメンドーなだけ。そう、カナは片付けられないオンナだった。今となっては、この頃のハルカのおかげ(教育。)で立ち直る事ができたが、放っておけばゴミ屋敷の主人にでもなりかねない程の猛者だった。
「そのレポート終わったら…ヤんよ。」
昨日のハルカのセリフである。まるで鬼教官だ。
ハルカとはあの事件以来、気の許せる関係だった。その次の土曜日に行ったクラブがハルカはとても気に入り、以降かかさず通っている。カナもハルカよりは休みがちだが、大切なイベントには行くようにしている。
ハルカと暮らすようになったのは、そのクラブ通いにあった。毎週末にクラブへ行くハルカは、西八王子の家賃三万六千円の自宅アパートには帰れず、小平のカナのそのアパートに身を寄せた。