それから一時間経ち、リハーサルを終え、本番が始まった。とどこおりなくコーナーを進行し、残すはサプライズのみとなった。
「さて、ココで大事なお客様をご紹介いたします!」
と、カナが言うと、何も知らないはずの沢村がニヤニヤした顔で
「ハイ!素敵な思い出とともに登場して頂きましょう!この方デス!」
ナニ?どうして沢村がこの事を知っている?カナはわからなかった。騙されていたのはカナだった。気が付いた。元はといえば、この番組は会いたい人に会いに行く番組だった。誰が来るのだ?
スモークがたかれ、一人の男が現われた。猪野実であった。あの忌まわしき思い出の中だけの存在だったはずの猪野実が、今、目の前にいる。
「ドーモぉ、初めまして。実は彼、カナちゃんの大学時代の彼氏なんでぇーす。イエイ!」
沢村が、してやったり顔で彼を紹介した。
違う。チガウ。確かにそうだが…違う。カナは腕の傷が疼くのを感じた。