昼を過ぎると、カナの仕事は一段落する。朝の生放送が終わり、明日の放送の資料集めも片付くからだ。今日はあとバラエティ番組の収録があるが、たいした仕事ではない。笑顔と進行の手順さえ忘れなければ難しくはない。
「カナちゃーん、オッツー」
突然だった。そのテレビ局の社員食堂に明るい声が響いた。
「あっ、お疲れさまです。」
作家の手島だ。この男はヤリ手のバラエティ作家で、しかもなかなかのイイ男だった。その為、若い頃はなにかとウワサがたち、誰と寝たとか、誰と付き合ってるとか大変な想いをした。が、最近はおとなしくしているようで、その手の話を聞かない。そんな32歳。
「あのさぁ、今日のゲチャドリ、サプライズだから。カスタネッツの。」
「あっ!わかりました。本変わったんですね。読んでおきます。」
かねてから、用意されていたサプライズが、今日やっと日の目を見る。ゲットユアドリームという番組で、メインのMCをしているカスタネッツというお笑いコンビの沢村君の元カノが登場するのだ。これは忙しくなるゾと、また気合いを入れて、食堂を後にした。