おかしい。隣のおばさんは彼女を知ってるはず（僕の不倫相手だと）。だから玄関を開けた。なのに・・
「すいません、川崎さんのお宅ですよね？」
「違うって言ってるじゃない！前に住んでたかナニか知らないけどいい加減にしてちょうだい！」
バタンッと隣の柴田さんがドアを閉めた。そして、彼女はこちらを向いて笑顔を見せ、「どう？今の見た？」という感じで歩いて来た。
「ワタシ、他人の記憶を書き替える事ができるの。今のは、しつこい借金の取り立てってカンジにアレンジしたワ。前の住人の事はきっとわからないでしょ。」
「あぁ。そういう事か。驚いた。」
「でしょ。」
しかし、彼女はテーブル。記憶を…。あぁ、彼女は幻かナニかなのか！…いや、隣の柴田さんにも見えていた。考えている僕を見て
「まぁ、いいじゃない。ワタシもアナタもその答えは持ってないワ。」
確かに。
「ねぇ、それを食べたら買い物に行ってヨ。ワタシ、お腹減っちゃった。」
そうなのか。テーブルなのに食事するのか。おうどんはもうないのかな？
「ワタシ、こんな具のないうどんはイヤよ！」
「！」
「言っておくけど他人の心は読めないワよ。」
「じゃあ、どうして？」
フーっと、大きなため息を吐き出してから
「誰でもわかるワ。アナタの考えている事は。」