そして、ハルカは一番大きな男に担がれ、路上に停めてあったワゴン車の中に消えた。その間、約十秒。一歩も動けない。すると、その黒いワゴン車は走りだした。
まずい。マズイ。やばい。ヤバイ。
…そこから先は実は覚えていない。カナの話しによると、カナが猪野先輩に助けを求め、仲間達を集め、捜索し、制裁を加え、ハルカの処女だけは、間一髪で守られたらしい。しかし、ハルカには大きなキズが残った。忘れえぬ心の傷だ。


「田口君はもっと相手の気持ちを考えれば、あんな言葉は出てこないわ。あいつらだってあんな言葉を聞かなければ本気で拉致なんてしなかったわ。きっと。もっとシャンと」
…。
「あっ！なんかゴメンね。変な事言っちゃった。とにかく仲良くネ。ボーっとして、言わなきゃいけない事も言わないままにしちゃダメだからネ！」
「あぁ、わかった。じゃあ。」
「じゃあネ。」 電話を切った。カナは自分の言葉が自分のムネをえぐる音を聞いた。ような気がした。