[嫌だ]
そう言おうとした唇に、
あたたかいものが触れた。
「ん・・・・・・!?」
指でもなくて。
勿論お菓子でもなくて。
すぐ近くに、彼の顔がある。
真っ白になった脳内にじわじわと浮かび上がるのは、あんちゃんと楽しそうに話していた、真寿さんの顔。
[杏悟も、あたしのことが好きだよ]
[あたしは、だから、だからね。すごい幸せなの]
[やーちゃんの大切な幼馴染さんは、すごく素敵な人だね]
ああ、やってしまった。
心の中で思うのは、あっけない一言。
まるで他人事のように呟いている私がいる。
ああ、やってしまった。
やってしまった。
ほら、やってしまった。
踏み込み過ぎるとこうなってしまうのだと、過去の私があざ笑う。
「やーちゃん」
息を吐くのと同時に呼ばれた名前は、ひどく胸を締め付けた。
「ごめんね」
謝ってからもう一度、
どうして君は、
唇を重ねるんだろう。


