「違うんだよ!知ってた?
今日は何とスコティッシュ・ブレックファスト!!

昨日ちょっぴりコックにお話したからね」

「……そうですか。

お話ってかいて脅迫って読みますよね、それ」

呆れたように青灰色の瞳をまりに向けるレグルスだが、心底呆れたわけではなく、そのようなやり取りは何時もの事であり、なおかつ彼も和食よりもスコティッシュ・ブレックファストの方が良かったのでそれ以上何も言わなかった。

メルクリウス寮は、夏場は涼しくなるためB1〜B7階(地下)に移寮、ネプトゥーヌス寮は熱射地獄の一階〜七階(地上)へと移寮。
季節変わって冬場、メルクリウス寮は、少しでも暖かくなるようにと一階〜七階(地上)に移寮、ネプトゥーヌス寮は反対に極寒のB1〜B7階(地下)と言うように、まりが起きてきたメルクリウス寮は地上にあるため、ネプトゥーヌス寮の生徒に比べれば、メルクリウス寮の生徒たちは四階にあるメンザ(学生食堂)に行くことが大変便利だ。

だから、まりやレグルスはもう既にメンザの茶色の板チョコの形をした扉の前まで来ていた。

「まり・アルブス様。
レグルス・アーテル様。
おはようございます。

今朝のお目覚めはいかがいたしましたでしょうか?」

恭しい態度で、彼ら二人に頭を下げる、学園専属の執事達。

勿論そんなこと、普通の生徒には行われはしないのだが、彼女たちの身分故に特別に行われるのだ。

「気分は悪くないわ。

あなたたちはいかが?」

「はっ!!!

滅相もございません!

私めなどを気にかけてくださるなんて!

ほんにありがたき幸せでございます!」

「そう。扉を開けてくださる?」

執事の言葉に、精巧につくられた人形のようなかんばせに笑みを浮かべた。

にっこり、と音が鳴りそうなほどの綺麗な笑み。レグルスは、彼女のそんな笑い方が嫌いだった。