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気がついたときは病院のベッドの上で、目の前には白い天井とパパとママの心配そうな顔がありました。

どうやらただの貧血だったみたいで、腕には点滴がつながっていました。

病院の先生が

「倒れたとき頭を打ったみたいだから、いちおう検査もしておこうね」


って言って看護師さんになにやら指示をしていました。
今日はこのまま病院で寝て行きなさいだって。
はぁ~あ……。退屈だぁ。


パパとママはもう帰っちゃったし、わたしももう寝るかな。







その時病室のドアが開いて



そこには息を切らして汗だくのお兄ちゃんが立っていました。



「おおおおおお兄ちゃん?!なんで、修学旅行は?!」



「なんだ……はぁ……結構……はぁ……元気じゃん……」



「もしかして……わたしのために帰ってきたの?」



「……わ、わりぃかよ……だいたいお前があんな、いかにもな倒れ方するから……」



なによ。


いつもそんなに優しくないじゃない。
目を逸らして顔を赤らめるお兄ちゃん。


いつもは憎たらしく感じるしゃべり方も


今はなんだか可愛く感じて


わたしはこみ上げてくる笑いを堪えきれずつい吹き出してしまいました。




「ナ?!てめーなに笑ってんだよ!」


顔が赤いのは


走ってきたから?


それとも照れてる?



わたしのためにそんな汗だくになって、修学旅行まですっぽかして……。




「あははは、ごめんねお兄ちゃん。でも、ありがと!」

「っつ―――お、おう……詫びとしてお前のハーゲンダッツで許してやる」

「え!ひどーい!!じゃこれは返してあげないから!!」



わたしはお兄ちゃんの落とした写真を取り出して見せました。



「なっ!おまえそれ!!なんで?!」

わたしは意地悪に笑って、普段見ることの出来ない慌てふためくお兄ちゃんの姿を堪能するのでした。



いつもわたしをいじめる優しくないお兄ちゃんは大っ嫌いだけど


そんな慌ててるお兄ちゃんはちょっとだけ




好きかな。




わたしのお兄ちゃんはいつも意地悪だけど



たまに




ほんとたま~に妹思いのお兄ちゃんです。




《end》