「本当にいいの?」 玄関先で、不安そうな千絵の顔を貴代はじっと見つめていた。 妻が愛人に自分を確かめてきてなんて滑稽な光景。 「大丈夫だって安心して待ってて」 貴代は精一杯の笑顔を千絵に向けた。 俯いて今にも泣き出しそうなその姿は、 確実に透けて見える。 それを貴代が口にすることはなかった。