ナツメ

「なんで泣くの」
「え…」

言われてはじめて自分が泣いていることに気付く。
頬が冷たい。

泣いたら涙でぼやけてナツメが見えない。

手の甲で涙を拭おうとして、失敗する。

拘束している鎖が、ジャリと音をたてるだけ。
拭えない。

布団の中に納まっていたナツメの手が伸びてきて、手の平がわたしの頬に触れた。
ちゃんと熱を持ったナツメの手。

温かい。

「…キス、」
「え?」

「キスしてください」