ナツメ

だって、たったのもう少し。
あとちょっと。

それなのに、その少しが埋まらないというのは、ぽっかりと大きな穴が空いているよりも切なくて寒くて痛い。

あとちょっと。
チョコレートのひとかけら程で埋まる空腹。

それが満たされないのであれば、死ぬ程の空腹のほうがマシだと思う。


ナツメは自分が関与できないわたしの時間すら束縛してくれる。

ナツメは知っているのだ。

今どこかで仕事をしているであろう彼は、わたしがこの部屋で動けずに、ただジッとしていることを知っている。

つまり、ナツメの頭の中には、きちんとわたしがいるということだ。