ナツメ

用事のないはずの舌。
それが、わたしの口の中を、ぐるりと一周舐めて引っ込んでいった。

キス、されたの?

今までの口移しの食事とは違う。

今のはキスだ。

けれど、ナツメは何食わぬ顔。

素知らぬふりで、わたしのコーヒーを飲んだ。

「トイレは?」

不意に聞かれてビックリする。夜じゃないのに。

「俺が帰ってくるまでトイレに行けないから」

トイレは? と、もう一度聞かれた。
ナツメの言ってる意味がわからなかったけれど、何時間も行けないのなら今行くしかない。