ナツメ

「ほら。フォーク持って」
「……」

「持ちなさいって!」

強い口調で言われて、むずかる子供みたいに嫌々それを右手に持った。

まるで初めてフォークを握った子供だ。

みっつに割れたフォークの先で、目玉焼きを突っつく。

突き刺して口元へと運んだところで、急に吐気に襲われて、わたしはフォークを置いた。

食べられない。
ナツメが食べさせてくれないと食べられない。

「食べられないの?」

頷く。

食べなくていいのなら食べない。
でも、食べろと言うのなら、ナツメが食べさせてくれないと。