ナツメ

冷たい声。

慌てて身体を離してナツメを見上げると、冷たい声とは裏腹にナツメの顔に動揺の色が浮かんでいた。

はじめて見せる表情。

「…ごめんなさい」

「なにが? なにが、ごめんなさいなの。とりあえず謝ればいいっていうの、俺嫌い」

じわっと涙が目に滲んだ。

嫌われたくない。

猛烈にそう思った。

「服を濡らしてごめんなさい。言うこと聞かなくてごめんなさい」
「ん。あっち向いて」

また身体を裏返されて、ナツメに背を向ける格好になる。

ぶーんとドライヤーが再開された。

許してもらえたのだろうか。
振り向きたいけどできない。