ナツメ

「こら。ダメだよ。まだ乾いてない」

声は怒ってない。

ダメだと言われても、背中に感じるナツメの体温が愛おしくて堪らない。

わたしの肩を押し返すナツメに逆らって、今度は振り向いて真正面からナツメの胸に顔を埋めた。

腕を背中にまわして、ナツメの身体を抱きしめる。

お日様みたいな匂いがした。

ぶーんと音をたてていたドライヤーがカチッと切られる。

「まだ乾いてない。俺の服が濡れるだろ」

「…二度おなじことを言わせるな。離れろ」