ナツメ

「君の愛した彼氏は、こんなことしてくれなかっただろう?」

「いくら互いに心で想い合っていても、彼は君に触れることすらできない」

「そして君も彼に触れることすらできない」

「それは愛と呼ぶの?」

わたしの顔を上向かせながらナツメは言う。

「君が死にたいと言っても、彼は君を殺せない」

「そうだろう? 連絡もとれやしないのに」

「例えば君が今から一年後に」

「死にたいから殺しにきてと電話をしても」

「彼は来てくれると思う?」


「俺は思わないね」