ナツメ

道端に転がっているだけの小石のようなわたしを、蹴り飛ばすことをせずにその両手に包んでくれた。

抱きしめて優しく大切に丁寧にポケットにしまわれたような気すらした。

嬉しかった。

陳腐な言葉かもしれない。

でも、ただただ嬉しかった。

からからに乾いて今にも干乾びてしまいそうな、砂漠のようなわたしの心。

そんなところに投げ込まれる彼の愛は、水のように清らかにわたしの心へと浸透した。

吸い込んでは乾き、吸い込んでは乾き。
足りなかった。

どんなに潤されても次の瞬間には乾いてしまう。
途端に不安になる。

見放された子供のように。