ナツメ

愛されてはいけない存在なのだから、愛されなくて当たり前。
傷などつかない。


そしてそれは大人になっても形を変えなかった。

愛されたいと願う一方で、愛されてはいけないと自分を叱咤する。


そんなわたしに、愛をくれた男がいた。

彼の手はまるで、泥水の中からわたしを救いだす清潔で美しい汚れのない手だった。

田山修。
それが彼の名前だ。

はじめて愛された。
わたしの全て。
なにもかもを彼は慈しんでくれた。