ナツメ

「行こうか」

キス。
酷い。酷い。

こんな時にキスするなんて酷い。

サヨナラのキスなんてするもんじゃない。

泣きそうになるのを必死に堪えた。


「うち、どの辺だっけ? 駅まで送る」


一ヶ月ぶりの外。

夏の風が吹き、地面には太陽が惜しみなく降り注ぎアスファルトを焦がしている。

あまりの眩しさに思わず眩暈がした。

ナツメに出会ったのは五月の終わり。
今日は六月最後の日。

いつの間にか、すっかり夏になってしまったんだなぁと思う。