私は無意識に将也に気をつかっていたのかもしれない。


伊月さんの連れ子としての気遣い。


「将也、も私のこと、お前って言わないで。なんか他人みたいだから」


「じゃあなんて呼べばいい?」


「雛子って名前で呼んで?」


私達はきっと寂しかったんだと思う。


ほとんど名前を呼ばれなくて、1人の時間が長くて。


「カレー、作ろっか」


ちょっと待っててね、将也、と声をかける。


「雛子」


初めて名前を呼ばれた。


「俺も手伝う」