「莉奈さん?」

「……はい?」

「どうか しました?」


いけない。
考え込んで黙ってしまったから
また心配を掛けてしまった。


「いえ、何でもないの… ごめんなさい」

「あ、わかった!」

「え?」

「お腹がいっぱいになったから眠くなったんでしょう?」


そう言って微笑んだ鳳を見てふと思った。


あぁそうか。足りないのは
魂が震えるほどの恋しさと
胸が痛くなるほどの切なさ。
そして 愛する気持ち。


私が愛しているのは・・・
私が愛されたいのは・・・
寂しい時に抱きしめて欲しいのは
嬉しい時にそばに居て欲しいのは
秀明、あなただけ。
私のヒーローはあなたしか居ない。


戻ろう。秀明のところへ。
そして確かめよう。


そう気持ちが決まったら
もう居ても立ってもいられない気持ちになった。
一刻も早く戻って秀明を待ちたい。
早く会いたい。


「…デザートは必要ないみたいですね」

「えっ?」


まさか逸る思いが表情や仕草に出てしまったのだろうか?
それとも読心術でも使えるのか?と思うほどの絶妙なタイミングでナプキンをテーブルに置き、席を立った鳳が何とも言えない微笑を浮かべた。


「残念ですけど…
仕方ありませんね。送りますよ」

「違うんです!どうぞ遠慮なくデザートを召し上がって」

「お気遣いなく。残念なのはデザートじゃありませんから」


その言葉の意味に気づかないフリをして、私は広げられたコートに袖を通した。