何も語らないキョウちゃん
引っ張られるように、まるでお散歩途中のワンコのように、手をつながれたまんまテクテク後ろをついている私。



お喋りしなくてもお互いの気持ちが伝わる。
繋がれた指先から愛しさが込み上げる。




――好きだなぁ…




私は彼の背中を見ながら、こう思う。




彼への気持ちに気づいた日から
彼と恋人同士になったあの日から
私は毎日毎日、キョウちゃんにドキドキしてる。



彼の子どもみたいな笑顔が好き
ヤキモチ焼いてる顔が好き
“美織”って呼ぶ、声が好き


柔らかくて、あったかい、あの唇が好き
キスした後の、あの熱っぽい瞳が好き


あったかいこの手が好き
骨ばった指が好き



バカみたいだよね?
幼なじみだった頃には気づかなかったクセに『好きだ』って気づいた瞬間、彼の何気ないしぐさにドキドキし始める。


何気なかった、今まで気にもかけなかった行動の一つ一つが宝物のように大切に思えて、いとおしくてたまらない。




「…ねぇ、キョウちゃん。」


「あぁん?なんだよ。」


「好きだよ?
キョウちゃん、大好き。」




マンションに向かう、人通りの少ない路地で、彼への気持ちがいっぱいになって今にも堰を切ってあふれ出そうで。堪らずに呟くと



「バカヤローっ!!
オマエ……いちいち唐突すぎんだよ……っ!!」



キョウちゃんは顔を真っ赤にして、私の左手を握ったまんまヘナヘナとその場にしゃがみむ。





――え、え、えぇ~!?


なんで!?
なんでこんなに腰砕けになってんの??



意味が分からなくて、キョウちゃんの顔をヒョイッっと覗き込むと、熱っぽい顔をしたキョウちゃんにグイッと強引に引き寄せられて



「ん、ん、んんーーーっ!!」



私は無理やりキスされる。