それから矢継ぎ早に時間は過ぎて
気づけば、キョウちゃんが旅だつ日は明日に差し迫っていた。



関係者へのあいさつに渡航準備
バタバタと忙しい日々を過ごしているキョウちゃんと、こんな時に限って仕事が詰まっている私は完全にすれ違いが続いていて


『もしかしたらこのままバイバイなのかも……』


そんなことを思っていた、お昼休み。




デスクの上に置いていた携帯がブルルと震えて、慌てて携帯を手に取るとそこに表示されていた名前は“藤堂響弥”



慌てて通話ボタンを押すと


「あ、クソ美??」


「もう。なんで今クソ美なのよ。」


電話の向こうからは相変わらずのキョウちゃんのふてぶてしい声が聞こえてくる。




明日が渡航の日なのに
いつも通り変わらないキョウちゃんに呆れていると


「なぁ、オマエ今日の夜、暇??」


キョウちゃんは突然、こんな提案を私に振りはじめる。




「あ…うん。暇だけどどうしたの??」


何気なくそう答えると


「いや、あのさ??」

「うん。」

「今日…オヤジもオフクロもいねぇんだよ。だからさー……ウチ、来ねぇ??今日はオマエと一緒にいたい。」


「え、えぇっ!!?」



キョウちゃんは、事もなげにこんな甘々な提案を私にぶつけてくる。





――ど、ど、どうしよう!!

これって…
これってそういうことだよね??


そういう…ちょっぴりオトナなお誘いだよね!?