水の中で大きく伸びて
ヒュウッと急浮上して大きく大きく水をかく。
その泳ぎは…
私の大好きな、彼の平泳ぎ
大会の時のような本気の泳ぎではないけれど、ゆっくりと華麗に泳ぐカレ
ずっと見てきた、その背中
キレイな柔らかい筋肉に覆われたキョウちゃんの大きな背中。
子どもの頃も
思春期の頃も
あの雨の日に見た背中も、この背中だった。
再会してからは幼なじみとして
担当しているアスリートとして
キョウちゃんのこの背中を何度見つめてきたことだろう。
大切な幼なじみとして見たときもあった。
担当しているアスリートとして見つめた時もあった。
だけど、今は違う。
だって…
だってね?
今まではこんな事なかった。
彼の背中を見て
キュンと心臓が締め付けられたことも
遠ざかる彼を見ながら
“切ない”と思ったコトも一度もなかった。
キョウちゃんの背中を見て
こんな風に苦しくなったことなんてない。
泣きたいぐらい切なくなって、その背中に抱きつきたい。
そんな風に思ったことなんて
今の今まで、一度だってなかったんだよ……
今感じる感情の全部
その全てが初めてで
上手く言葉にできなくて、もどかしい。
私はただ、その背中を見つめることしか出来なくて、言葉にならない。
溢れる気持ちに頭の中が締め付けられて、胸の奥が焦げそうだ。
苦しい
苦しい
そして、切ない。
――好き…
好き
大好き。
彼が好き
理子ちゃんが言っていた言葉
綾音が言っていた言葉が
どんどん絡まり、一つの大きな線になる。


