暗い暗い、その廊下。
ほの暗い廊下を一歩進むたび、カツーン、カツーンとヒールの音が建物全体に響いていく。
人がいない廊下って
真っ暗な廊下って
こんなにも音が響くものかと思うくらい、自分の足音も、自分の呼吸さえもがうるさく感じる。
こわごわとゆっくりゆっくり足を進めて、プールに近づいていくと
パシャン…
パシャン……
遠くからかすかにだけれど
誰かが水をかく音がする。
――キョウ…ちゃん??
プールに近づくたびに強くなる塩素の香りと
爽やかな水の音。
ココまで来て他人だったら
本当に私って間抜けだなぁ……。
そんなくだらないことを考えながら私はゆっくりと足を進める。
時に激しく
時に優しく
水と遊んでいるかのようにコロコロと変わる、水の音
「もう。さては真面目に泳いでないな??」
私は苦笑しながら
その場に立ち止まって、その音をじっとじっと聞いていた。
不思議だけど…ね??
その音に耳を澄ましていると、もう怖さはなくなっていたんだ。
不思議だけれど、この音が聞こえた瞬間、私の心からは“恐怖”という感情は消えていて、新しく心の中に生まれたのは驚くほどの“安堵感”。
――もう大丈夫
不思議だけどそう思えた。
優しい雨音にも似た、その水音
あの夜のような
激しい雨音にも似た、その水音
もう怖くない
この水音はキョウちゃんの奏でる、世界で一番美しい音
きっとこの先には…
私の大切な大切な、何よりも大切な幼なじみが待っている。
その音は私に大きな大きな安堵感を与えてくれたんだ。


