――コイツ…何か知ってる!?
その想いを確信に変える程の、吉良光太郎の悪魔のささやき。
疑惑と怒りを湛えた目をして
彼をゆっくりと振り返ると
吉良光太郎は私の耳にさらに近づいて、誰にも聞こえないほどの小さな声で、さらにこう囁く。
「藤堂もバカだよね。
たかがオンナ一人のために人生棒に振るなんて。」
――どういう…こと!?
オンナ一人のため!!?
人生を棒に振る!?
吉良光太郎から飛び出したキーワードが頭の中で乱舞する。
「あんた……何か知ってんの!!?」
間違いない!
コイツは何かを知っている。
そう確信した私が吉良光太郎の腕をギュウッと握って、彼の顔をギロリと睨みつけると
「そんなに気になるなら藤堂に直接聞けばいいじゃん。」
悪魔の笑顔はどこへやら
純真無垢な天使の顔して、吉良光太郎はケラケラと笑い始める。
「ふざけないで!」
「ふざけてないよ~。
俺は藤堂じゃないからわかんないも~ん。
ただ、あんな無様なレースするぐらいなら死んだ方がマシだと心底思うけどね~。」
必死の形相の私に
私の話を右から左へ受け流す、吉良光太郎。
つかみどころのない、
掴ませてくれない吉良光太郎にイラついていると
「じゃー、ヒントをあげる。」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、吉良光太郎は私の耳元に唇を寄せる。


