「この試合は全国放送で流れてる。
当然METSERAの人事部のやつらだって見てるだろ??こんなワケわかんねぇ試合見せられたら…悪いけど内定取り消しは必至だろう。」


――そんな…!!


『日本選手権で判断させてもらう』


METSERA人事部の方に言われた言葉を思い出して、胸の奥が重くなる。




そんな私に向かって


「甘いな。
内定取り消しなんかで済めばいいほうだ。」


拓真くんは酷く厳しい目をして
膝の上で手を合わせたまんま、淡々と話し出す。



「どういう…こと??」



「こんな混乱を招くような試合の仕方は水泳協会にも物議を醸す。調子が悪くて予選敗退ならまだしも、こんな意図的な試合放棄はスポーツマンシップに反するからな。
下手したら…響弥は水泳協会から締め出しを食らって金輪際試合に出られなくなるかもしれないぞ。トップ選手だからこそ…響弥にはかなり厳しいペナルティーが科せられるはずだ。」




――締め出し…!!?




その言葉を聞いて
体中の血という血が凍りついて
冷たくなった指先がガタガタと震えだす。



そんな…!!
じゃあ、なんで…!?


キョウちゃんはバカじゃない。
自分が取った行動の末に待つ悲劇に気づいていたはずなのに、なんでそんなことしちゃったの!!?




わからない。
全く意味が分からない。