その声に驚いて
ハッと意識を集中させると
観客席からは割れんばかりの声援がキョウちゃんに送られている。



――いけない!今は集中しなきゃ!!



自分の仕事を忘れて感情を優先させてしまったコトに、軽く罪悪感を感じながら気を取り直して彼の泳ぎを見守っていると




「……すごいな、今日の響弥は……。」


「…え??」


「なんか…鬼気迫るというか、今までの自分の競泳人生の全てを賭けてるというか……。とにかく、いつものアイツの泳ぎとは全く違う。」




拳にグッと力を入れて
今にも立ち上がりそうなほどの興奮を抱えた目で、拓真くんはキョウちゃんの泳ぎを見つめてる。







誰よりも速く
誰よりもきれいに
そして水に助けてもらいながら誰よりも自由に泳ぐ、キョウちゃん。




2頭身あった2位との差はやがて3頭身近くになり




「やっぱ…アイツはすごい。
キラなんかじゃ、逆立ちしたって敵わない…。」


「いけ~~~っ!!
藤堂~~っ!!!」



全員がキョウちゃんの世界新記録樹立を確信して、驚喜に震える。