だってそうでしょう??
キョウちゃんは世界水泳・オリンピックで優勝することを最大の目標にしているんだもの。



いずれキョウちゃんは私なんかじゃ手の届かない、大きな大きな世界に旅立ってしまうに違いない。




触れたくても触れられない

関わりたくても関われない




そんな世界に彼は近い将来、旅立ってしまう――……




私とキョウちゃんは幼なじみ

二人だけの秘密
あの消えない雨の音を共有する、幼なじみ




だけど……
ずっと一緒なワケじゃない。




空白だった10年間のようにいつかキョウちゃんは私の目の前からいなくなって、手の届かない世界に旅立って。


私はきっと彼を見つめることだけしかできなくなる。


大きな彼をただ遠くから見つめることしかできない日々。
心のなかでしか応援できない日々。


そんな日は近い将来、確実に来る…と思う。





――さみしい…


――さびしい…





その事実に気づかされた時
私の胸の中に不思議な感情が芽生えた。




彼の素晴らしい泳ぎを見て
興奮するでも
感嘆するでも
驚喜するでもなく
芽生えた感情は“さみしい”の4文字




どうして…??
どうしてこんな感情を感じなきゃいけないの…!?


キョウちゃんだよ?
相手はキョウちゃんなんだよ??


カレと関わらずに生きていけるなら、それこそ万々歳じゃない…!!!



変。
変だよ、私。
どうしてこんなに心がかき乱されなきゃいけないの!!?





自分で自分の中に生まれた感情に激しく戸惑う。そんな自分に驚きながら、目の前で繰り広げられるキョウちゃんの素晴らしい泳ぎに魅入っていると



「すげぇ!!すげぇ!!!
またアイツ速くなってねぇ!!?」


「あぁ……。
響弥の泳ぎは何度も見ているが……こんな鬼気迫る泳ぎは初めてだ…!!」



喜多川君と拓真くんはギュッと拳を握りしめながら、彼に感嘆の声を上げていた。