雨が見ていた~Painful love~



スタート台に立ち
弓なりに体をしならせて
獲物を狙う獣のように鋭い瞳をして、水面を見つめるキョウちゃん




静かで
あまりに静かで
息することすらためらわれる、水泳場の中で



『ピッ』



スタートを告げる電子音が鳴り響くと、選手全員が一斉に水の中に飛び込んだ。





深く深く水の中に潜り込んで
水の中を自由に泳ぐいるかのように、ツゥとすごいスピードで前に進んだかと思うと、今度はいきなり急浮上して、大きく大きく水をかき、前に前に進んでいく。



「よっしゃ!!藤堂、1位だぜ!!」



スタートから浮上した時、先頭に立っていたのはキョウちゃんだった。




2位との差はかろうじて頭1つ分くらい。




――これだけだと…わかんない…!!




50M×4で200M
まだまだレースは序盤でここで一位だからと言って安心はできない。






跳ねる水しぶき
建物の中に静かに響く水の音



頭3つ分の差は広がることも狭まることもなく、最初の50Mが終わり、美しいターンを決めるとキョウちゃんはまた前へ前へと進んでいく。





「あれ~?
意外と遅くないか??」


「…え??」


「だって藤堂って日本チャンピオンなんだろ??
それにしては50Mのタイムそんなによくないぞ??」




そう言って、喜多川君が電光掲示板を指さす。
そこに表示されていた50Mのタイムは32秒02



「あのタイムって…
予選1組で3位だったヤツと同じくらいじゃないか??」