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帝体大・更衣室破壊事件から、3日後。


2日後に日本選手権を控えた、この大事な時期に


『藤堂の調子が戻りました。
絶好調…ってワケではありませんが、予選は楽々通過できると思いますよ。』



SKプロダクションに郷田先生からお電話がかかってきた。




先生曰くキョウちゃんは『普通の状態にやっと戻ってくれた』らしい。





先生はなぜか私にとっっても感謝をしていて、しきりに“ありがとう”を連発してくれていたけれど



――う、うーーん。


私は少し複雑な気持ちでその言葉を聞いていた。





だって、だってさ?
私は何にもしてないんだもん。


キョウちゃんのよくわからない話をウンウン近くで聞いてただけなのに……そんなに褒めたてられるとなんだか申し訳ない気持ちになるよ。





電話を切った後にハァとため息を吐くと、いつものごとく


「どーしたの??」


隣のデスクにいた喜多川くんが心配そうに声をかけてくれる。



「ん~~??
藤堂さんの調子が戻ったのは私のおかげだって郷田先生が言いだしてね??ちょっと気が引けてるだけ。」



デスクにベタッっと突っ伏しながら答えると



「い~じゃん。
いやな言葉じゃないんだから、好意は好意としてありがたく受け取っておきなよ。」



クスクス笑いながら、喜多川君は私の背中をパシパシ叩く。




――えぇ~??そうなの??



なんだか複雑な気持ちになって、眉をゆがめると



「その道のプロが言ってるんだから、そういうことなんじゃない??俺たち素人にはわからない“何か”があったんだって。」


「そうかなぁ。」


「そうそう。
それに、何はともあれ藤堂の調子が戻ってくれたんだからよかったじゃないか。」



喜多川君はニッコリほほ笑む。