この不思議な感情はなんなんだろう。


キョウちゃんにしか浮かばない、この不思議な感情の答えはなんなんだろう。


そして……
あの窒息しそうなほどの高揚感は、いったいなんだったんだろう。




それはよく考えてみればすぐにわかる
かんたんな問題なのかもしれない。



だけど……
どこまでも鈍感で弱虫な私は、その答えに行き着くのが怖かった。





拓真くんには穏やかなのに
キョウちゃんにだけ過剰に反応する、私の感情



怒りも

悲しみも

人間らしい一番汚い負の感情をさらけ出せるのは、キョウちゃんだけ…なんだよね。結局のところは。




喜びや

楽しさや

幸福感は誰にでも見せられる。



だけど……
一番醜い負の感情を見せられるのは、この広い世界に一人だけしかいない。





弱虫同士の傷のなめ合いなのかもしれない。


ただの馴れ合いなのかもしれない。





でも、私の感情を激しく揺り動かし、揺さぶって、メチャクチャにして、私の心をおかしくさせるのは…キョウちゃんだけ。




嫌いなのに

怖いのに

離れたくても離れられない



どんなことをされても
どんなことを言われても


最後の最後で許してしまう
キョウちゃんへの、この不思議な気持ち



この気持ちの根本に流れるものはなんなんだろう。


この気持ちの先に行き着く答えはいったいなんなんだろう――……




なんだか一回りたくましくなったような彼の背中を見つめながら、呑気な私はそんなことをずっとずっと考えていた。




キョウちゃんが…
あの時どんな気持ちで、あの暗い廊下を歩いていたのかなんて、何一つ、知りもしないで。