――この二重人格男め!



そんな悪態を心の中でつきながら



「えぇ。練習の邪魔してごめんなさいね。
調子がよさそうで安心したわ。」




ニーッコリと
営業用のスマイルを向けると




「ふーーん。藤堂のスパイが堂々と入り込んでくるなんてビックリしたけど…、どうだった??俺の出来。」




自信満々に吉良光太郎が私に問いかける。
あの、目の奥が笑っていない冷たい笑顔で。





――この悪魔!!
いけしゃあしゃあとよく言うわ!!





そう思いながらも


「えぇ…とてもいい出来だと思いますわ。
日本選手権が楽しみですわね。」


そう答えると


「でしょ?絶不調の藤堂なんかには今度こそ負けないからね~。」


悪魔はにやにやと鋭い笑みで私を刺す。






「藤堂に言っといてよ。『わかってるだろうけど今度の日本選手権、勝つのは俺だからね。』ってさ??」







勝ち誇ったような
キョウちゃんを馬鹿にしたようなその口調、その視線に体中の血が怒りで沸騰する。



――あんたが余計なことしなかったらキョウちゃんが楽々優勝なんだから!!



そのセリフが喉の奥まで出かかったけれど、私はその言葉をグッとお腹の底に引っ込めた。