「藤堂の様子がおかしくなったのは、桐谷さんがウチに来た“あの日”からです。アイツは何も言いませんが……少し気になったので、失礼を承知でお電話したんです。」
――キョウちゃんが、スランプ
あのキョウちゃんがスランプ
電話を持つ手がフリーズしたように、固まって動かない。
言葉も動きも止まったまんまの私を心配そうに喜多川くんが見つめている。
そんな中、郷田先生は
「アイツとなにかあったんですか?
それ以外にアイツが調子を崩すなんてこと、考えられなくてね…。」
苦しそうに電話の向こうでつぶやく。
キョウちゃんと…何かあったか??
10年前には確かに“何か”があった。
未だに私の心を蝕んで、苦しくさせる“何か”があった。
だけど……今は何もない。
悪態つかれて、苛められはするけれど、キョウちゃんの調子を崩すような“決定的な事件”は今のところは何もないはずだ。


