巨大な嵐は、ある日突然現れた。
オフィスワークに精を出していた、正午過ぎ
「桐谷、電話。」
「え??」
「帝体大の郷田先生。
なんか、切羽つまった感じだったぞ?」
私は隣のデスクの喜多川くんから、そう声をかけられた。
――郷田先生??
いったい何の用だろう……
不思議に思いながら回線を自分の電話に繋げて
「はい、お電話変わりました。桐谷です。」
そうお返事をすると
「あ、桐谷さんですか?
おひさしぶりです、郷田です。」
電話の奥からは落ち着いた郷田先生の声が響いてきた。
「おひさしぶりです。
その節は大変お世話になりました。」
キョウちゃんにプールに投げ捨てられた時、一番心配してくださっていたのは先生だったことを思い出して、私は丁寧にお礼を伝える。
すると
「いやいや!
あれはこちらが全面的に悪いんですから!お礼なんて言われるとこちらが恐縮してしまいます。
本当に……うちの藤堂が大変な失礼をいたしまして申し訳ありません。」
郷田先生は聞いてるこっちが辛くなるような声で、真摯に謝罪してくれた。
その気持ちが嬉しくて
「大丈夫です。
キョウ…………、じゃなくて藤堂さんにイジメられるのは慣れてますから。」
明るくそう振る舞うと、郷田先生は何かを考えるように、言葉を選んでいるように、しばらく押し黙って。
意を決したように
「失礼は承知の上でお尋ねさせてください。
桐谷さんと藤堂は幼なじみだとお伺いしましたが……本当に幼なじみだけの関係……なんでしょうか……??」
そんな言葉を口にした。


