雨が見ていた~Painful love~



“言えない”んじゃなく“言わなかった”だけ。




それに気づいたとき
私はふと思った。



『言えない』



窓の外を見つめて
私の言葉を待っている拓真くんに…



ううん。



他の誰にも“言えない”と思った。




プール突き落とし事件はさておき…
無意識のうちに隠し続けた、この秘密





秘密の共有者は…
きっとキョウちゃんしかありえない。




拓真くんは過呼吸の原因を語った瞬間、何かにピンとくるだろう。



ホンワカしてるけれど、鋭いところもある人だもの。
私をプールに突き落とした犯人がキョウちゃんだと知ったら…私たちの秘密に勘づいてしまうかもしれない。



――そうなった時が怖い。
何よりも一番怖い。




窓の外に吹きすさぶ風はどんどん強くなっていて、木々の枝のしなりが大きく大きくなっている。




そんな風景を見ながら



「ごめん…拓真くん。
今は何も言えない。」



意を決して小さな声でポツリとつぶやく。




きっと拓真くんは『どうして?』とか『なんで?』とか聞き返すのかな…と思ったけれど



フゥとため息を吐くと



「…そう…。」



残念そうにそう呟くだけだった。






そしてまた訪れる、沈黙






大きく揺れる木々を見ながら
私と拓真くんは
何も語らず
視線すらも合わせずに
静かにその空間に身を寄せていたのだった。