窓の外には煌めく体育館の明かりと、風に流れる樹木の枝が見える。
白い白い、この医務室
私と拓真くん以外、誰もいないこの空間。
遠慮なんてしなくてもいいのに
誰にも遠慮なんてしなくてもいいのに、私と彼との間には沈黙だけが流れてしまう。
空気が流れるように
沈黙だけがこの空間を彩ってしまう。
私はシーツを握りしめながら…
その沈黙の意味を考えていた。
言いたい
なのに、言えない。
それは……
自分を守るために言えない、じゃない…気がする。
私はその言葉を口にした瞬間に
崩れ去ってしまう“モノ”が怖い…のかもしれない。
そこまで考えが行き着いた瞬間
私は一つの答えにたどり着いてハッとする。
――バカみたい…
自分で自分に呆れてしまう。
何も言えなかったんじゃない。
私は何も“言わなかった”んだ。
バカでお人よしの私は
この期に及んでも、彼を守りたいと思ってる。
私はその事件を明るみに出すことで
彼を傷つけてしまうことを私はひどく恐れてる。
こんな大事な時期に彼の不祥事が明るみになったらどうするの?
いい意味でも悪い意味でも有名になってしまった彼だもの。
きっとマスコミは朝も昼も張り付いて
彼は普通の状態で練習することができなくなってしまうだろう。
そしてずっと付きまとうんだ
“レイプ魔の水泳選手”
っていう黒いレッテルが。
――バカだなぁ、やっぱり私
怖いと思っていても
最低だと思っていても
最後の最後で捨てられない。
大切な幼なじみで
大切な友達で
誰よりも深い絆で繋がれていた彼を苦しめたくなくて、傷つけたくなくて…私は何も言わなかったんだ。
“言えない”んじゃなく
私は”言わなかった”だけなんだ。
誰にも打ち明けられなかったのは…
心の傷の深さ以上に守りたいものがあったから、なのかも。


