頭ではわかってる。
今すべてを口にできたなら
今は苦しくても、いつかその傷がかさぶたになってくれること、なんとなくわかってる。
自分が傷ついていること
言葉にしなきゃ、きっと前に進めない
心の傷を乗り越えるには
まずはその傷丸ごと、全部自分が飲み込んでしまわなきゃ治療は始められない、と何かの本に書いてあった。
心の傷は
自分の傷の深さを認識することから治療が始まる。
『まずは傷口を見せつけろ』
拓真くんはきっと、そう言いたいんだと思う。
お医者さんだってそうだよね?
傷を見なきゃ治療はできない。
ココロもカラダも同じこと
カラダは目で見て
ココロは耳で聞いて
お医者さんは治療を始める。
ずっと隠し続けた、事件の真実
私とキョウちゃんだけが共有する、あの悪夢
「………っ……。」
言いたい
言いたい
洗いざらい全部話して、前に進んでしまいたい
なのに……
どうして??
「……っ。」
どうして私はその一言が言えないんだろう。
拓真くんは知っている。
私がレイプされたことも、誰かにプールに突き落とされたせいで過呼吸を起こしてしまったことも、全部全部知っている。
だから…
今更何を隠す必要があるっていうの??
話してしまえばいいのよ、美織
言ってしまえばいいのよ。
『キョウちゃんがやった』って。
なのに……
私の口からは何一つ
上手く言葉が出てこない。


