パパ…もとい社長は

“ああいうギラついたヤツは嫌いじゃない”

と言っていた。



キョウちゃんに吉良光太郎



タイプが似てて
同じ競泳で
同じ平泳ぎの選手




あまりに似すぎた二人をプロモートするってどうなんだろうと、進言しても


「ま、なるようにしかならないだろ。」


ハハハと笑って、社長は全く相手にしてくれなかった。




それでも心配で、声を荒げると



「ライバルがいない職場なんて、炭酸の抜けたぬるーいビールみたいなもんだからな。」



社長はこんなたとえ話を言いだした。





「…炭酸の抜けたビール?」


「…そっ。想像してみてよ。
ぬるくて炭酸のないビール♪
キンキンに冷えてシュワシュワしたのど越しがウマイのに、醍醐味の全てが抜けたビールに美織は魅力を感じるか??」




うーーー。
ぬるいうえに炭酸も抜けてるビール??


うーーー。
想像しただけでキモチワルイ…。




「いや…全然興味ない。」


そう首を振ると


「だろ??
人は競う生き物だからな。
刺激がない日常はつまらない。
ライバルが身近にいれば響弥もキラも頑張るしかなくなる。それこそ、あいつらの望んでる世界。厳しく楽しい、アスリートの世界ってヤツだろう?」


そう言って
社長はフフンと計算高くほほ笑んだ。



「キラに響弥。
二人は競い合って強くなる。
人が強くなるには良くも悪くも対抗馬ってヤツが必要なんだよ。」



2人のおかれたこの状況こそが、俺の望んだステージだ!とでも言わんばかりに社長はニッコリ天使のように微笑んだ。