『奪われるくらいなら、俺は奪う。
美織のハジメテは俺が貰う。
覚えとけよ、美織。オマエがどんなに拓真に抱かれても、他のオトコに抱かれても、オマエのハジメテの相手はこの俺だ!!』
『俺は絶対許さない!
オマエを絶対許さない!!
俺をこんな風に狂わせたのはオマエだ、美織!!』
あの雨の夜
キョウちゃんの言った一言が耳の奥から離れない。
彼が言った“大嫌い”の言葉と、あの行為が私と拓真くんの関係をダメにした。
植えつけられたSEXの恐怖心に
バージンを奪われてしまった申し訳なさ
それを……どうやって伝えればいいんだろう。
目の前にいる、優しい、優しい、この人に、どうやって伝えればいいんだろう。
自分でさえも受け止めきれなくて
誰にも言えなかったこの傷を
どうやって彼に説明すればいいんだろう。
あの事件は自分でも処理しきれないことなのに。
認めたくない
消してしまいたい、過去
自分はレイプされた、だなんて
言葉にして受け止めてしまったら、もう二度と立ち上がれない気さえする。
――どうすればいい?どうすれば…!!!
何もかもが分からなくて
軽いパニック状態になっていた私を
「ここじゃ目立つから…ちょっと外行くか。」
拓真くんは私の手をつないだまんま、テクテクと前に前に進んでいく。


