「その先はちーっと話が混み合っててな?
こんな公(オオヤケ)の場で話せる話じゃねーから…、ちょっと事務所に来てくれねぇか??」
少し困ったような龍おじさんの表情に、ただならない雰囲気を感じた私はコクンと頷く。
するとオジサンは拓真くんに目配せをすると
「じゃ、スクールのほうは頼むな、拓真。」
「はい。」
そう言ってニッコリとほほ笑む。
そして吉良光太郎に向き直ると
「キラ。」
「ん~~??」
「お前は俺と一緒に事務所に来てくれ。」
「ん、了解~。」
そう言って
カレの背中を軽く押しながら、2階の事務所へと誘導をしていった。
1階はプールと受付
2階にはジムと事務所という構造のSGスイミングスクール
ほのかに塩素の匂いのする1階の廊下をテクテク歩いて、階段を上ったすぐの所にオーナーの常駐する事務所がある。
重い鉄のドアをゆっくり開くと、手前には経理担当の事務員さんが忙しそうに電卓と資料をにらめっこしていて。
その奥のコーチ用のデスクではジャージ姿のコーチがちらほらと休憩を取っている。
そんな忙しそうな社員さんたちのデスクをかき分けて、さらに奥に進むと茶色い気の扉が現れて
そこをゆっくりと開くと……
オーナー室へとたどり着く。


