泣き腫らした目をハンカチで冷やしていると、誰かが入ってきた。
「……飯塚さん?」
「橘くん…」
橘真斗(たちばな まさと)
いつも和田谷と一緒にいる人だ。
「あ…のさ」
気まずそうに視線をそらす橘くん。
「聞いてた?」
「あぁ…」
あたしは、一息置いてから話し始めた。
「…なんか気になるの。ほっとけないっていうか……」
「ほっとけない?アイツを?」
コクリと頷く。
「……そんなこと言うやつ初めて。今までの女は、みんな構ってほしいって言ってたから」
へぇ……
「あたしは…そうは思わない。何か、和田谷は距離をとってる気がする。」
「距離?」
橘くんは不思議そうな顔をして聞き返してきた。