教室に入ると、もう和田谷は席に着いていた。
クラスの男子とおしゃべりしてる……
ドキ、と高鳴る胸を押さえながら席に向かう。
「おっはよ飯塚!」
「え……?」
話し掛けたのは誰でもない和田谷で。
いつものようにヘラッとした顔で話しかけてきた。
「…おはよ」
「なんか元気ねぇな?」
「…別に」
「好きなヤツにでもフラれたか〜?」
「……っ、あんたねぇ!」
和田谷の方を振り返ると、何も考えてないような無表情の顔があった。
ゾクッと鳥肌がたつ。
「……何でもない」
和田谷、和田谷のその黒い瞳は、吸い込まれてしまいそうなくらい真っ暗で、あたしはそんな和田谷から目を背けた―――