「……で……の…」
「……だ……ら…」
よく耳を澄ましてみる。
「なんで?私じゃダメなの?」
「ダメっていうか…彼女には出来ない」
和田谷の声だ。
なんかもめてるみたい…?
「…じゃあ、最後にキスして?」
き、きききすぅ!?
「……キスなんかでよかったらいくらでもするよ」
暫くしてから、パン、と乾いた音が響いた。
「最っ低!」
反対の扉から女の子が出ていく。
「……飯塚?」
和田谷にバレちゃった…!
「や、やあ…」
ばかばかあたし!!
なにが“やあ”よ!
「ぷっ…見てたろ?」
「……うん。あの子、4組の?」
「あぁ」
「付き合わないの?」
一番聞きたかったこと。
「……俺、彼女は作らない主義なんだ。」
「でも…キス」
「キスしたよ?最後にって言われたし」
「……最低だよ和田谷」
好きな人にキスされたら、忘れられないじゃん…
それに、好きな人とキスすることに意味があるんじゃないの?

