「君はもう僕のものだから、君が僕の愛情表現に馴れるまでいくらでも待てる」


そうなの?


「わたしがオロオロしても気を悪くしない?」

「しないよ」


わたしは少し気が楽になって、シートの上でモゾモゾと座り直した。


「ね、ホントに今日はどこに行くの?」

「近くだよ。郊外に出て、坂道を上る」

「それで?」

「たぶん、君が見た事もないものが見られる」

「雲海とか?」


圭吾さんは笑った。


「それはまた次の機会に」

「あ……山登りがしたいわけじゃ……」

「雲海を見るのに山登りをする必要はないよ」


だって、雲海って山の上から見るものでしょ?

そう言いかけて、わたしは口をつぐんだ。

羽竜一族は龍神様の子孫で、不思議な力を持っている人が多い。一族の長である圭吾さんは、その中でも特別なんだという。

雲を呼び寄せるくらいできるのかも。

いや、まさか――ね?