ドギマギして、リラックスなんてできないよ。


何度キスしたって、何度抱かれたって、ちっとも慣れない。

圭吾さんがわたしに触れる度に、心臓が止まりそうになっちゃう。


「今日のところは、もう悪さをしないからさ」


うーん

ちょっとなら悪さもいいんだけどな


――そんな軽口さえ、恥ずかしくてわたしには言えない


圭吾さんは、言葉通り『お兄さん』に徹しようと決めたらしい。

車に乗って家を出ると、優しい態度はいつも通りだったけれど、思わせぶりな仕草も、甘い言葉も引っ込めてしまった。

ホッとするのと同時に、それはそれで物足りなさを感じてしまう。


ダメじゃん、わたし


圭吾さんが恋人らしくする度に、自然な態度が取れなくなってしまう。


みんな、どうやって恋をしてるの?

教科書があるなら見てみたい。


「ゆっくりでいいよ」

わたしの心を見透かしたように、圭吾さんが言った。