「俺もそう思ってた」

大輔くんも言った。


「犬を飼う話より、世界史の指導方法を見直すのが先じゃない? 理事長センセ」

悟くんが皮肉っぽく言った。


「生意気言うな。世界史は二年の授業だ。今年から二年生の美月ちゃんが分からないのは当然だ」


「悟」

圭吾さんがため息混じりに言った。

「お母さんを説得して来い。上手くいったら、大学卒業までアルバイトとして雇ってやる」


「やりぃ」

悟くんはニヤッと笑って立ち上がった。


おじ様が悟くんをジロッと睨む。


「行け。僕達はもう帰るから、首尾は電話で報告してくれ――おいで志鶴」

圭吾さんがわたしに手を差し出した。


「了解。じゃあ、しづ姫またね」

悟くんは軽い足取りで部屋を出て行った。


「圭吾、あいつの口車に乗ったらひどい目に会うぞ」

おじ様は顔をしかめて言った。