「み……美月は驚かないのね」


「あー、わたしは小学生の頃からこの家に出入りしてますから、慣れっこです」


おじ様が、決まり悪げに咳ばらいをした。


「とにかく、その……なんだ。母さんを止めてくれ」


「僕はやだね。大輔、お前が言えよ」


悟くんの言葉に、大輔くんが顔をしかめた。


「えーっ! 俺もやだよ。犬かわいいし、飼ってもいいじゃん」


「お前もか、ブルータス!」


「三田先輩、ブルータスって何ですか?」

美月が小声で聞いた。


「『何』じゃなくて『誰』。古代ローマの人。ジュリアス·シーザーの暗殺者の一人だよ」

わたしも小声で答える。


「えっ? ジュリアス·シーザーって古代ローマの人なんですか?」


「初代皇帝だけど」


「そうなんですか? わたし、てっきりハリウッドの女優さんだと思ってました」