悟くんは五人兄弟だ。

1番上がわたし達の高校の校長、司先生。

次が要さんで、大学生の巧さん、わたしと同い年の悟くん、末っ子の大輔くんと続く。

そのために悟くんの家には、わたし達が今いる部屋――二十畳はあろうかというプレイルームがある。

この部屋なら、どんなに騒いでも平気だったろうな。


「だって、もうみんな大きくなっちゃったじゃない。司は結婚して独立しちゃったし、大ちゃんだってもう高校生だし」


「だからっ! 『大ちゃん』って呼ぶなよっ!」

大輔くんが怒った。


「えっ! ダメなの?」

美月が目を丸くした。


「美月にならいいけどさ、高校生にもなって母親にちゃん付けで呼ばれたくねぇよ」


「ほらね。ママは寂しいのよ。うちも犬を飼いましょうよ」


「それは父さんに言って」

悟くんが言った。


「お父様ね……一応言ってみようかな」

悟くんのお母さんは、ため息をついて部屋を出て行った。